チョウナはとても古い道具です。

チョウナはとても古い道具です。

チョウナの歴史は大変古く、石器の時代を含めると数万年の歴史があります。日本列島に人類が住み始めるきっかけとなった航海に使われた丸木舟の加工にも石器のチョウナが使われてきたと考えられています。

鉄器の時代から数えたとしても2000年以上使われてきています。

国内各地の遺跡から鉄製のチョウナが出土しています。

2021年に三重県鈴鹿市で発掘された木製の樋にも、はっきりとチョウナによる加工跡が見られます。

またチョウナは昔の絵巻物にもよく描かれています。

春日権現験記絵巻(1309年)

石山寺縁起絵巻(鎌倉時代末)

これらの絵巻物に描かれたチョウナは現在使われているものとほぼ同じものであり、これは大変珍しいことです。例えば同じ絵巻に描かれたノコギリは現代のものと全く異なった形をしています。

このことからチョウナはよく「大工道具の生きた化石」と呼ばれます。

実のところチョウナのような素朴な道具は誰でも思いつくものですから、世界中に類型が存在します。ですが現在では木工機械の発達により無用の長物となったチョウナは世界のほとんどの地域では見捨てられた存在のようになっています。ヨーロッパでも博物館的に復元などに使われているに過ぎません。日本でだけ数十年前まで頻繁に使われてきました。これは世界的に見ても大変珍しいことです。ですが現在では日本国内でも殆ど実用として使われることはありません。文化財や数寄屋建築などチョウナで加工した跡がどうしても必要な分野での使用に留まっています。

また余談ですが、漢字の起源は物の形をかたどった象形文字であることはよく知られていますが「平」の字は「于」の部分がチョウナで「ハ」の部分がチョウナでハツった時に左右に飛び散るハツリ屑を表していて、平らかに削る(はつる・と読みます)という意味を示す、と言われています。(白川静「字統」平凡社)。皆さん知らず知らずのうちにチョウナのイメージを見ていたことになります。

 

 

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